お盆になると、お墓参りをしたり、仏壇にお供え物をしたり、ご先祖様を迎える準備をする家庭も多いのではないでしょうか。
迎え火や送り火を焚き、きゅうりとなすで精霊馬を作る――。
そんな風景を「日本のお盆」として思い浮かべる人も多いでしょう。
しかし、実はお盆の過ごし方は全国共通ではありません。
ある地域では7月にお盆を迎える一方、多くの地域では8月がお盆。さらに、旧暦に合わせて毎年異なる日程でお盆を迎える地域もあります。
ご先祖様の迎え方や送り方もさまざまです。
大きな送り火を焚く地域。
精霊船を送り出す地域。
盆踊りで故人を供養する地域。
そして、本州とは異なる独自の先祖供養文化が今も色濃く残る地域もあります。
同じ日本の「お盆」なのに、なぜこれほど違うのでしょうか。
そこには、その土地の歴史や信仰、人々の暮らしが深く関係しています。
この記事では、日本各地に伝わるお盆の風習を地域別に紹介するとともに、7月盆・8月盆・旧盆の違いや、全国に残る珍しいお盆行事についてもわかりやすく解説します。
自分の地域では当たり前だった風習が、実は全国的には珍しいものだった――。
そんな発見もあるかもしれません。
日本各地のお盆を比べながら、それぞれの土地に受け継がれてきた文化を見ていきましょう。
お盆にやってはいけないこと15選|理由や意味・地域ごとの違いもわかりやすく解説
- お盆の風習はなぜ地域によって違う?
- 7月盆・8月盆・旧盆の違いとは?
- 地域別|日本各地のお盆の風習
- 北海道のお盆|さまざまな地域の文化が混ざり合う
- 東北地方のお盆|盆踊りや地域行事が今も残る
- 関東地方のお盆|7月盆と8月盆が混在する地域
- 中部地方のお盆|山・海・都市部で異なる多彩な風習
- 関西地方のお盆|送り火や伝統行事が受け継がれる
- 中国・四国地方のお盆|灯りや踊りに込められた供養の心
- 九州地方のお盆|精霊を盛大に送り出す地域も
- 沖縄のお盆「旧盆」|本州とは大きく異なる先祖供養文化
- 全国にはこんなにある!珍しいお盆の風習
- 地域によって違うのは行事だけではない
- 「うちのお盆」が全国共通とは限らない
- 自分の地域のお盆の風習が分からない場合は?
- お盆の地域差に関するよくある質問
- まとめ|地域によって違うからこそ日本のお盆は面白い
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お盆の風習はなぜ地域によって違う?
「お盆なら、全国どこでも8月13日から16日では?」
そう思っている人もいるかもしれません。
しかし、日本のお盆は、時期だけでなく、お供え物やご先祖様の迎え方、送り方などにも地域差があります。
こうした違いが生まれた背景には、お盆が長い歴史の中でさまざまな文化や信仰と結びつきながら発展してきたことがあります。
仏教だけでなく日本古来の祖先信仰も関係している
現在のお盆は仏教行事として知られています。
その背景の一つにあるのが、仏教の「盂蘭盆会(うらぼんえ)」です。
しかし、日本のお盆は仏教だけで説明できるものではありません。
日本には古くから、亡くなった祖先の霊を敬い、家族や子孫を見守ってくれる存在として大切にする祖先信仰がありました。
こうした日本古来の考え方と仏教行事が長い年月をかけて結びつき、各地域の生活や風土にも影響されながら、現在のお盆文化が形成されていったと考えられています。
そのため、「お盆はこうするもの」という全国共通の形が一つだけ存在するわけではないのです。
明治時代の改暦がお盆の日程にも影響した
現在でも「7月がお盆」という地域と、「8月がお盆」という地域があります。
この違いを理解するうえで重要なのが、明治時代に行われた暦の変更です。
日本では1873年(明治6年)から、それまで使用されていた太陰太陽暦から現在につながる太陽暦へ移行しました。
もともと旧暦7月に行われていたお盆も、新しい暦に合わせる必要が生じます。
そこで、新暦の7月にそのまま行う地域がある一方、農作業の時期などとの兼ね合いから、約1か月遅らせた8月に行う地域も広がりました。
現在、多くの地域で8月13日から16日頃に行われているお盆は、「月遅れ盆」と呼ばれることがあります。
一方、東京などの一部では7月にお盆を迎える風習が現在も残っています。
さらに沖縄や奄美などでは、旧暦を基準にしたお盆文化が受け継がれています。
同じ「お盆」でも時期が違うのは、こうした歴史的背景があるためなのです。
気候や暮らし、地域文化によって独自に発展した
お盆の地域差を生んだのは暦だけではありません。
日本は南北に長く、気候も暮らし方も地域によって大きく異なります。
農業や漁業といった仕事、地域の祭り、寺院や宗派、古くからの民間信仰など、さまざまなものがお盆文化と結びついてきました。
その結果、
「この地域では当たり前なのに、隣の県ではほとんど行われていない」
という風習も生まれました。
地域ごとの違いは、「どちらが正しいか」という問題ではありません。
それぞれの土地で、ご先祖様を大切に思う気持ちが独自の形となって受け継がれてきた結果なのです。
7月盆・8月盆・旧盆の違いとは?
地域別の風習を見る前に、まず知っておきたいのが、お盆を行う「時期」の違いです。
日本のお盆は、大きく分けると「7月盆」「8月盆(月遅れ盆)」「旧盆」という3つの形があります。
| 種類 | 主な時期 | 特徴 |
|---|---|---|
| 7月盆 | 7月13日~16日頃 | 東京など一部地域で見られる |
| 8月盆(月遅れ盆) | 8月13日~16日頃 | 現在、全国的に広く行われている |
| 旧盆 | 旧暦7月頃 | 沖縄・奄美などで見られ、毎年日付が変わる |
※お盆の日程や呼び方は地域・寺院・家庭によって異なる場合があります。
世界にもお盆はある?各国の先祖供養文化を比較|日本との違いや共通点を解説
7月盆|東京など一部地域に残るお盆
7月盆は、新暦の7月13日から16日頃に行われるお盆です。
東京をはじめ、一部の地域では現在もこの時期にお盆を迎える家庭があります。
「東京のお盆は7月」と紹介されることもありますが、東京都内でも地域や家庭によって8月に行う場合があるため、一概には言えません。
全国的には8月盆が広く定着しているため、他地域から引っ越してきた人が「もうお盆なの?」と驚くこともあるでしょう。
8月盆|現在もっとも広く行われている「月遅れ盆」
現在、日本の多くの地域で一般的なのが8月13日から16日頃のお盆です。
「月遅れ盆」と呼ばれることもあります。
8月13日にご先祖様を迎え、16日頃に送り出すという流れがよく知られていますが、具体的な日程や行事は地域によって異なります。
一般に「お盆休み」と呼ばれる時期も、この8月盆に合わせたものです。
帰省してお墓参りをしたり、親戚が集まったりする光景は、日本の夏を代表する風景の一つとなっています。
旧盆|旧暦を大切にする地域のお盆
沖縄や奄美などでは、現在でも旧暦を基準にお盆を行う文化が残っています。
旧暦の日付を現在のカレンダーに当てはめると毎年日にちが変わるため、旧盆の日程も年によって異なります。
特に沖縄では、旧盆は非常に重要な行事です。
ご先祖様を迎える「ウンケー」、中日にあたる「ナカヌヒー」、ご先祖様を送り出す「ウークイ」など、本州のお盆とは異なる独自の文化が受け継がれています。
エイサーやウチカビなど、沖縄ならではの風習もあります。
詳しくは後ほど、沖縄の章で紹介します。
どのお盆が正しいというわけではない
7月盆、8月盆、旧盆。
時期が違うと、「本当のお盆はいつなの?」と思うかもしれません。
しかし、どれか一つだけが正しく、ほかが間違っているというものではありません。
地域の歴史や生活、信仰などによって、それぞれのお盆文化が受け継がれてきました。
大切なのは、日付だけにこだわることではなく、その土地や家庭で大切にされてきた風習を尊重しながら、ご先祖様を思うことです。
では、実際に日本各地ではどのようなお盆が行われているのでしょうか。
ここからは、北海道から沖縄まで地域ごとの特徴を見ていきましょう。
地域別|日本各地のお盆の風習
ここからは、北海道から沖縄まで、日本各地のお盆の特徴を見ていきましょう。
同じ都道府県内でも、地域や宗派、家庭によって風習は異なります。
そのため、ここで紹介するものが、その地域すべての家庭で行われているわけではありません。
「こんな風習も受け継がれているんだ」という視点で、日本各地のお盆文化を楽しんでみてください。
北海道のお盆|さまざまな地域の文化が混ざり合う
北海道では、8月13日から16日頃にお盆を迎える地域が多く、お墓参りをしたり、仏壇へお供えをしたりしてご先祖様を供養します。
北海道のお盆文化を考えるうえで興味深いのが、明治以降の開拓との関係です。
北海道には本州をはじめ全国各地から多くの人々が移り住みました。
そのため、それぞれの出身地から持ち込まれた風習が各地で受け継がれ、同じ北海道でも地域や家庭によってお盆の過ごし方に違いが見られます。
「北海道のお盆はこうする」と一つの形にまとめるのが難しいのも、このような歴史が関係しています。
北海道で暮らしている人にとって当たり前だったお供えや墓参りの方法が、別の地域の人には珍しく映ることもあるでしょう。
それぞれの家族のルーツがお盆の風習に残っていると考えると、普段何気なく行っているお盆も少し違って見えてきます。

東北地方のお盆|盆踊りや地域行事が今も残る
東北地方では、8月13日から16日頃にお盆を迎える地域が多くあります。
お墓参りやお供えなどに加えて、盆踊りや地域の供養行事が受け継がれている場所もあります。
ただし、東北6県でも風習はさまざまです。
ここでは、その中でも特徴的なものを見てみましょう。
青森県|地域によって異なるお盆の風景
青森県でも、お盆になると家族でお墓参りをしたり、仏壇へお供えをしたりする光景が見られます。
一方、青森の夏と聞いて「青森ねぶた祭」を思い浮かべる人も多いでしょう。
灯りをともした巨大なねぶたは、どこか送り火や灯籠を思わせます。
しかし、現在の青森ねぶた祭を単純に「お盆の行事」と考えるのは適切ではありません。
ねぶた・ねぷたの由来については複数の説があり、七夕行事や眠り流しなどとの関係も指摘されています。
有名な夏祭りとお盆文化は時期や雰囲気が似ていても、必ずしも同じものではないのです。
こうした違いを知ることも、日本の夏の行事を理解する面白さの一つでしょう。
岩手県|地域に受け継がれる盆踊りと供養
岩手県でも、8月のお盆には帰省して家族や親族が集まり、お墓参りをする家庭が多く見られます。
また、地域ごとに盆踊りなどの伝統行事も受け継がれてきました。
盆踊りというと、現在では夏祭りの娯楽という印象も強くなっています。
しかし、そのルーツをたどると、念仏踊りや死者供養など、信仰と深く関係して発展したものもあります。
太鼓や笛の音に合わせて人々が輪になって踊る光景には、地域の人々が世代を超えて集まるという、お盆ならではの意味も残されています。
秋田県|西馬音内盆踊りに残る幻想的なお盆文化
秋田県のお盆文化を代表する行事の一つが、羽後町で行われる「西馬音内(にしもない)盆踊り」です。
毎年8月に行われる伝統的な盆踊りで、編み笠や「彦三頭巾」と呼ばれる黒い覆面を身につけた踊り手たちが踊る、幻想的な光景で知られています。
顔を隠した踊り手が静かに舞う姿には独特の雰囲気があり、一般的な盆踊りとはまた違った魅力があります。
西馬音内盆踊りには複数の由来が伝えられており、亡くなった人を供養する意味も重なりながら現在の形へ発展してきたとされています。
お盆が「家族の中だけでご先祖様を供養する行事」ではなく、地域全体で受け継がれる文化でもあることを感じさせてくれる行事です。
宮城・山形・福島にも地域独自のお盆文化がある
宮城県、山形県、福島県でも、お墓参りやお供え、盆踊りなど、さまざまなお盆の風習が受け継がれています。
東北地方は一つの地域としてまとめられることも多いですが、実際には山間部、沿岸部、都市部などによって生活文化も異なります。
さらに同じ県内でも集落や家庭によってお供え物やお墓参りの方法が違うことがあります。
「東北のお盆」という一つの形があるのではなく、それぞれの土地で育まれた小さな文化が集まっていると考えた方がよいでしょう。
関東地方のお盆|7月盆と8月盆が混在する地域
関東地方のお盆で特徴的なのが、「7月盆」と「8月盆」の両方が見られることです。
特に東京都では7月13日から16日頃にお盆を行う家庭があることで知られています。
一方、関東でも8月にお盆を行う地域や家庭は多くあります。
そのため、「関東のお盆=7月」と決めつけることはできません。

東京都|7月に迎える「東京盆」
東京都の一部では、7月13日から16日頃にお盆を行う風習が残っています。
一般に「東京盆」などと呼ばれることもあります。
盆提灯を飾り、仏壇にお供えをして、迎え火・送り火でご先祖様を迎え送るなど、基本的な考え方は8月盆と大きく変わりません。
違うのは主にその時期です。
全国的には8月のお盆が広く定着しているため、東京の7月盆を初めて知った人は驚くかもしれません。
一方、東京都内でも8月にお盆を行う家庭はあります。
東京へ全国各地から多くの人が移り住んできたこともあり、現在では家庭による違いも大きくなっています。
神奈川・千葉・埼玉など|地域や家庭によって時期もさまざま
神奈川県、千葉県、埼玉県などでも、地域によって7月盆と8月盆が見られます。
例えば同じ県内でも、
「実家では7月だったけれど、結婚相手の家では8月だった」
ということも珍しくありません。
お盆は暦だけでなく、それぞれの家に受け継がれてきた風習の影響を強く受ける行事です。
引っ越しや結婚などをきっかけに、初めて自分の家庭のお盆が全国共通ではなかったと知る人もいるでしょう。
関東のお盆から見えてくる「家ごとの文化」
現代では人の移動が増え、地域の風習と家庭の風習が必ずしも一致しなくなっています。
祖父母の出身地の習慣を受け継いでいる家庭もあれば、現在住んでいる地域のお盆に合わせる家庭もあります。
そのため、
「隣の家とお盆の日が違う」
「同じ県なのに風習が違う」
ということがあっても、不思議ではありません。
むしろ、その違いの中に、それぞれの家族が歩んできた歴史が残っているとも言えるでしょう。
お盆の地域差を調べてみることは、自分の家族のルーツを知るきっかけにもなるのです。
中部地方のお盆|山・海・都市部で異なる多彩な風習
中部地方は、日本海側の北陸から中央高地、太平洋側の東海まで広がり、気候や歴史、生活文化が大きく異なる地域です。
そのため、お盆についても「中部地方ならこの風習」と一つにまとめることはできません。
8月にお盆を迎える地域が多い一方、地域や家庭によって時期や供養の方法にも違いがあります。

長野県|地域に残る盆踊りと先祖供養
長野県では、8月のお盆に帰省し、お墓参りや仏壇へのお供えをする家庭が多く見られます。
山々に囲まれた長野県では、それぞれの地域や集落で独自の行事が受け継がれてきました。
盆踊りもその一つです。
現在では夏の娯楽として親しまれている盆踊りですが、その背景には先祖供養や地域の人々が集う場としての役割もあります。
お盆になると普段は離れて暮らす人たちも故郷へ帰り、世代を超えて同じ場所に集まる。
盆踊りには、ご先祖様だけでなく「故郷とのつながり」を確かめる意味もあるのかもしれません。
新潟県|地域のつながりを感じるお盆
新潟県でも、8月のお盆にはお墓参りや仏壇へのお供えなどを行う家庭があります。
一方で、新潟県は南北に長く、山間部・平野部・沿岸部・島しょ部などで生活文化も異なります。
そのため、お盆の細かな習慣についても地域差があります。
親族が集まり、お墓をきれいにして故人へ手を合わせる。
そうした時間は、ご先祖様を供養すると同時に、普段離れて暮らしている家族や親族が再びつながる機会にもなっています。
北陸地方|富山・石川・福井にも残る地域ごとの文化
富山県、石川県、福井県など北陸地方でも、お墓参りや仏壇へのお供えなどを通してご先祖様を供養します。
北陸には古くから寺院や仏教文化が暮らしと深く結びついてきた地域も多く、家庭や宗派によってお盆の迎え方が異なります。
同じ県内でも、お供えするものや墓参りの時期、盆行事の内容などが違う場合があります。
「北陸だからこの方法」と考えるより、自分の家庭や菩提寺に伝わる方法を確認することが大切です。
東海地方|7月盆と8月盆など地域による違いも
愛知県、岐阜県、静岡県などの東海地方でも、お盆の時期や風習には地域差があります。
8月にお盆を行う地域が多く見られる一方、場所や家庭によっては7月に行う場合もあります。
都市部では全国各地から人が移り住んでいることもあり、現在では「地域の風習」と「それぞれの家庭の風習」が混在しているケースも珍しくありません。
これは関東地方とも共通する、現代のお盆文化の特徴と言えるでしょう。
関西地方のお盆|送り火や伝統行事が受け継がれる
関西地方にも、ご先祖様を迎えて送り出すさまざまな風習があります。
その中でも全国的に有名なのが、京都の「五山送り火」です。
夜の山に巨大な「大」の字が浮かび上がる光景を、テレビや写真で見たことがある人も多いでしょう。
しかし、五山送り火は単に夏の夜を彩る観光イベントではありません。
お盆に迎えた精霊を送る行事として、長く受け継がれてきた文化です。

京都府|ご先祖様を送る「五山送り火」
京都では毎年8月16日に「五山送り火」が行われます。
京都盆地を囲む山々に火がともされ、
- 大文字
- 妙法
- 船形
- 左大文字
- 鳥居形
の文字や形が夜空に浮かび上がります。
お盆に迎えた精霊を再びあの世へ送るための行事として知られ、京都の夏を代表する伝統行事の一つとなっています。
特に有名なのが、東山の如意ヶ嶽に現れる「大」の文字です。
このため五山送り火全体を「大文字焼き」と呼ぶ人もいますが、正式には「五山送り火」と呼ばれています。
単に山を焼く行事ではなく、精霊を送る宗教的・文化的な意味を持つ行事であることを知っておきたいところです。
華やかな花火大会とは違い、暗い山肌に静かに浮かび上がる炎を見つめながら、ご先祖様を送り出す。
そこには、日本のお盆が持つ「別れ」と「感謝」が象徴されているようにも感じられます。
奈良県|奈良の夏にも受け継がれる「送り火」
奈良でも、お盆の時期にはご先祖様や亡くなった人々を供養する行事が行われています。
その一つとして知られているのが、奈良市で8月15日に行われる「奈良大文字送り火」です。
高円山に「大」の文字が浮かび上がり、亡くなった人々の慰霊と世界平和への祈りが捧げられます。
京都の五山送り火と見た目は似ていますが、成立した背景や行事の意味は同じではありません。
似たような風景であっても、その土地の歴史によって込められている意味が違う。
これも、地域別のお盆文化を比較する面白さの一つです。
大阪府|都市の中にも残る盆踊りと供養文化
大阪では、地域の盆踊りや寺院での法要など、さまざまな形でお盆の文化が受け継がれています。
都市化が進んだ現在でも、お盆になると実家へ帰省したり、お墓参りをしたりする家庭は少なくありません。
また、地域の盆踊りは子どもから高齢者まで幅広い世代が集まる機会となっています。
現在では地域のお祭りとして楽しむ意味合いも強くなっていますが、盆踊りの背景には先祖供養や死者を送る文化とのつながりがあります。
兵庫・滋賀・和歌山にもそれぞれのお盆がある
兵庫県、滋賀県、和歌山県でも、お墓参りやお供え、盆踊りなど、地域ごとにさまざまな風習があります。
同じ関西地方でも、都市部と農村部、山間部、沿岸部では生活文化が異なり、お盆の形も一様ではありません。
また、宗派や菩提寺によって供養の方法が異なる家庭もあります。
だからこそ、「京都ではこうだから関西全体も同じ」と考えないことが大切です。
京都の送り火から見える「送る」というお盆の意味
お盆では、ご先祖様を「迎える」ことに目が向きがちです。
しかし、迎えた後には必ず「送る」という時間が訪れます。
「今年も帰ってきてくれてありがとう」
「また来年も帰ってきてください」
そんな思いを込めて送り出すのが、送り火です。
京都の五山送り火のような大規模な行事もあれば、自宅の前で小さな送り火を焚く家庭もあります。
形や規模は違っても、ご先祖様とのひとときに感謝し、静かに見送る気持ちは共通しています。
地域ごとのお盆文化を知っていくと、違いだけではなく、その奥にある共通した思いも見えてくるのです。
中国・四国地方のお盆|灯りや踊りに込められた供養の心
中国・四国地方でも、8月のお盆を中心に、お墓参りやお供え、盆踊りなどさまざまな風習が受け継がれています。
なかでも特徴的なのが、「灯り」や「踊り」と結びついた文化です。
現在では全国から観光客が訪れる大きな祭りへ発展したものもありますが、その背景をたどると、お盆や死者供養との関わりが見えてくるものがあります。
広島県|盆灯籠が並ぶ色鮮やかなお墓
広島県の一部では、お盆のお墓参りで「盆灯籠」と呼ばれる灯籠を供える風習があります。
竹などを骨組みにして色紙を張った、細長く色鮮やかな灯籠が墓地に並ぶ光景はとても特徴的です。
地域や時代によって形は変化していますが、お盆になると墓地に多くの盆灯籠が並ぶ様子は、広島ならではの夏の風景として知られています。
また、初盆を迎える家庭では、通常とは異なる色の灯籠を用いる習慣が見られる地域もあります。
ただし、近年では火災やごみ処理、環境への配慮などから、灯籠の持ち込みを制限したり、代わりの方法を採用したりする墓地もあります。
伝統的な風習も、現代の暮らしに合わせながら少しずつ形を変えているのです。
徳島県|阿波おどりとお盆の深いつながり
徳島県の夏を代表する行事といえば、「阿波おどり」です。
「踊る阿呆に見る阿呆」という言葉でも知られ、現在では日本を代表する夏祭りの一つとなっています。
徳島市の阿波おどりは例年8月のお盆の時期に開催され、多くの踊り手と観客で街がにぎわいます。
阿波おどりの起源については複数の説があり、一つだけに断定することはできません。
盆踊りから発展したとする考え方のほか、城の完成を祝った踊りに由来するという説、風流踊りとの関係なども伝えられています。
現在の阿波おどりは大規模な祭典として発展していますが、「盆に人々が集まり、踊る」という日本の盆踊り文化を考えるうえでも興味深い存在です。
華やかな踊りの背景に、何世代にもわたって受け継がれてきた地域文化があることを知ると、阿波おどりの見え方も少し変わってくるかもしれません。
その他の中国・四国地方にも残る多彩なお盆文化
岡山県、鳥取県、島根県、山口県、香川県、愛媛県、高知県などでも、お墓参りや盆踊り、地域の供養行事などが受け継がれています。
中国山地の集落、瀬戸内海沿岸、山陰地方、四国山地など、土地によって人々の暮らしが異なるため、お盆の形もさまざまです。
また、盆踊りの歌や踊り方が集落ごとに異なるケースもあります。
全国的には知られていなくても、その地域の人々にとっては何世代にもわたって受け継がれてきた大切なお盆の風景なのです。
九州地方のお盆|精霊を盛大に送り出す地域も
九州地方にも、お墓参りや盆踊り、お供えなど多彩なお盆文化があります。
その中でも全国的に知られているのが、長崎県の「精霊流し」です。
「精霊流し」という名前から、灯籠を静かに川へ流す光景を想像する人もいるかもしれません。
しかし、長崎の精霊流しは、そのイメージとは大きく異なります。
長崎県|爆竹の音とともに故人を送る「精霊流し」
長崎では8月15日、初盆を迎えた故人の霊を送る「精霊流し」が行われます。
家族や親族などが「精霊船」と呼ばれる船を用意し、街中を曳きながら故人を送り出します。
精霊船には故人をしのぶさまざまな装飾が施され、大きなものになると非常に迫力があります。
そして、長崎の精霊流しをさらに特徴的なものにしているのが、爆竹や鐘などの大きな音です。
夜の街に爆竹の音が響き渡る様子は、「静かに故人を送る」という一般的なお盆のイメージとはかなり異なります。
初めて見た人は、そのにぎやかさに驚くかもしれません。
しかし、これは単なるお祭り騒ぎではありません。
大切な人をしのび、精霊船とともに送り出す、長崎に受け継がれてきた盆行事です。
故人との別れを静かに表現する地域もあれば、盛大に送り出す地域もある。
その違いは、日本のお盆文化の多様性を象徴していると言えるでしょう。
「精霊流し」と「灯籠流し」は同じもの?
名前やイメージが似ているため混同されることがありますが、長崎の精霊流しと一般的な灯籠流しは同じものではありません。
灯籠流しでは、灯りをともした灯籠を川や海へ流し、故人や先祖を供養する光景がよく見られます。
一方、長崎の精霊流しでは、精霊船を人々が曳いて街を進みます。
特に爆竹が鳴り響く光景は長崎の精霊流しを象徴する特徴の一つです。
「流し」という名前だけから、静かな水辺の行事だと思って訪れると、その違いに驚くでしょう。
福岡・佐賀・熊本・大分・宮崎・鹿児島にも地域ごとの風習
九州は地域ごとの文化的な特色が強く、お盆についても一つの形にまとめることはできません。
福岡県、佐賀県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県などでも、墓参りやお供え、盆踊りなどが行われていますが、その方法は地域や家庭によって異なります。
同じ県でも、海沿いと山間部では異なる文化が残っていることがあります。
さらに九州南部から奄美、沖縄へ目を向けていくと、本州で一般的なお盆とはさらに異なる文化が見えてきます。
「送る方法」に表れる地域ごとの個性
京都では山に火をともし、長崎では精霊船を曳く。
広島では墓前に灯籠を供え、各地では盆踊りが行われる。
こうして比べてみると、「ご先祖様を送る」という一つの目的に対して、地域ごとにまったく異なる方法が生まれていることが分かります。
その土地で暮らしてきた人々が、何世代にもわたって「どうすれば大切な人を迎え、送り、忘れずにいられるのか」を形にしてきた結果なのかもしれません。
お盆の地域差は単なるルールの違いではありません。
そこには、それぞれの土地で受け継がれてきた家族への思いと歴史が刻まれているのです。
沖縄のお盆「旧盆」|本州とは大きく異なる先祖供養文化
日本各地のお盆を見てきましたが、その中でも特に独自の文化が色濃く残っているのが沖縄です。
沖縄では現在でも旧暦を基準にした行事が多く、お盆も旧暦7月13日から15日に行われるのが一般的です。
そのため、現在のカレンダー上では旧盆の日付が毎年変わります。
沖縄では先祖を敬う文化が暮らしの中に深く根付いており、旧盆は一年の中でも非常に大切な行事の一つです。
本州などで見られるお盆と同じように、ご先祖様を迎え、家族で過ごし、最後に送り出します。
しかし、その方法には沖縄ならではの特徴があります。
旧盆の3日間は、それぞれ
- 1日目「ウンケー」
- 2日目「ナカヌヒー」
- 3日目「ウークイ」
と呼ばれています。
一つずつ見ていきましょう。
ウンケー|ご先祖様を迎える日
旧盆初日の旧暦7月13日は「ウンケー」です。
「お迎え」という意味を持ち、ご先祖様を家へ迎える日です。
家族は仏壇を整え、食べ物などを供え、ご先祖様を迎える準備をします。
本州のお盆でいう「迎え盆」に近い役割を持っています。
地域や家庭によって具体的な方法は異なりますが、「ご先祖様が帰ってくる」という考え方そのものは、日本各地のお盆と共通しています。
離れて暮らしていた家族が集まることもあり、旧盆は生きている家族とご先祖様の両方がつながる時間でもあります。
ナカヌヒー|ご先祖様と一緒に過ごす中日
2日目の旧暦7月14日は「ナカヌヒー」と呼ばれます。
「中の日」という意味で、ご先祖様が家で過ごしている日と考えられています。
家族で仏壇に料理などを供えながら、ご先祖様とともに過ごします。
初日のウンケーや最終日のウークイと比べると比較的落ち着いた日ですが、親戚を訪ねたり、仏壇へ手を合わせたりする時間にもなります。
ご先祖様を迎えてすぐ送り出すのではなく、「一緒に過ごす時間」が間にあるのも旧盆の大切なところです。
ウークイ|ご先祖様を送り出す最も大切な日
旧盆最終日の旧暦7月15日は「ウークイ」です。
ご先祖様をあの世へ送り出す日で、旧盆の中でも特に重要な日とされています。
家族や親族が集まり、仏壇へ料理などを供え、ご先祖様へ感謝を伝えます。
そして、夜になるとご先祖様を送り出すための儀礼が行われます。
本州の「送り盆」や「送り火」と目的はよく似ています。
しかし、沖縄ではここで非常に特徴的なものが登場します。
それが「ウチカビ」です。
ウチカビとは?あの世で使うためのお金
ウチカビは、沖縄の先祖供養で使われる紙です。
黄色い紙に銭を模した模様があり、「あの世のお金」のようなものとして扱われています。
ウークイでは、家族がご先祖様へ感謝を伝えた後、ウチカビを燃やして送り出します。
これは、ご先祖様があの世で困らないように持たせるという意味を持つ風習です。
初めて見る人にとっては、「紙のお金を燃やす」という行為が不思議に感じられるかもしれません。
しかし、世界に目を向けると似た文化があります。
中国の中元節などでも、祖先があの世で使えるように紙銭を燃やす風習が見られます。
沖縄のウチカビからも、東アジアの文化圏とのつながりを感じることができます。
エイサーと旧盆の関係
沖縄のお盆文化を語るうえで欠かせないものの一つが「エイサー」です。
太鼓の力強い音とともに踊る姿を、沖縄旅行やテレビなどで見たことがある人も多いでしょう。
現在では観光イベントや祭りでも披露されるため、「沖縄を代表する踊り」というイメージが強くなっています。
しかし、エイサーは旧盆とも深いつながりを持つ伝統芸能です。
旧盆の時期になると、青年会などが地域を巡りながら踊る「道ジュネー」が行われる地域があります。
太鼓や歌、踊りとともに地域を練り歩き、祖先供養などの意味を持つ文化として受け継がれてきました。
本州の盆踊りと同じように、現代では祭りや娯楽として楽しまれる面を持ちながら、その背景には先祖を思う文化が息づいているのです。
沖縄の旧盆と本州のお盆を比較すると?
沖縄の旧盆と、本州で広く見られる8月盆を比べてみましょう。
| 比較項目 | 本州などで一般的なお盆 | 沖縄の旧盆 |
|---|---|---|
| 時期 | 8月13~16日頃が多い | 旧暦7月13~15日 |
| 日付 | 基本的に毎年同じ | 現在の暦では毎年変わる |
| 迎える日 | 迎え盆 | ウンケー |
| 中日 | 地域による | ナカヌヒー |
| 送る日 | 送り盆 | ウークイ |
| 特徴的なもの | 盆提灯・精霊馬・迎え火など | ウチカビ・エイサーなど |
※実際の風習は地域・家庭・宗派などによって異なります。
一見すると大きく違います。
しかし、その流れを比べると、
迎える → 一緒に過ごす → 感謝して送り出す
という基本的な考え方はよく似ています。
使うものや呼び方が違っても、ご先祖様を家族の一員として迎える気持ちは共通しているのです。
違うからこそ見えてくる「お盆」の本質
本州では、きゅうりとなすで精霊馬を作る家庭があります。
京都では山に送り火をともし、長崎では精霊船で故人を送ります。
そして沖縄では、ウチカビを焚き、地域によってはエイサーの音が響きます。
方法だけを比べれば、まったく別の行事のように見えるかもしれません。
しかし、その奥にあるのは、
「今年も帰ってきてくれてありがとう」
「また来年も帰ってきてください」
という、ご先祖様への思いです。
お盆の地域差を知ることで見えてくるのは、「正しいお盆の方法」ではありません。
形が違っても、大切な人を思う気持ちは受け継がれている。
それこそが、日本各地のお盆文化に共通するものなのかもしれません。
全国にはこんなにある!珍しいお盆の風習
ここまで日本各地のお盆を見てきました。
同じ「ご先祖様を迎えて送り出す」という行事でも、その方法は驚くほど違います。
山に大きな火をともす地域もあれば、船を使って故人を送り出す地域、踊りを受け継いできた地域もあります。
代表的なものをまとめると、次のようになります。
| 地域 | 代表的な風習・行事 | 特徴 |
|---|---|---|
| 秋田県羽後町 | 西馬音内盆踊り | 編み笠や彦三頭巾を身につけて踊る伝統的な盆踊り |
| 京都府京都市 | 五山送り火 | 山々に「大」などの文字や形を炎で描き、精霊を送る |
| 広島県の一部 | 盆灯籠 | お盆の墓参りで色鮮やかな灯籠を供える |
| 徳島県徳島市 | 阿波おどり | お盆の時期に行われる日本を代表する踊りの祭典 |
| 長崎県長崎市など | 精霊流し | 精霊船を曳き、初盆を迎えた故人などを送り出す |
| 沖縄県 | ウチカビ | あの世で使うお金に見立てた紙を燃やして祖先へ送る |
| 沖縄県各地 | エイサー | 旧盆と深く関わり、地域を練り歩く伝統芸能 |
こうして並べてみると、とても同じ「お盆」から生まれた文化とは思えないほど多彩です。
しかし、そこには共通点があります。
それは、亡くなった人を忘れず、迎え、供養し、再び送り出すことです。
表現方法が違うからこそ、それぞれの土地の歴史や価値観が見えてきます。
静かに送る地域もあれば、にぎやかに送る地域もある
お盆というと、静かに手を合わせて故人をしのぶイメージを持つ人も多いでしょう。
実際に、家庭の仏壇やお墓で静かに供養する地域は数多くあります。
しかし、長崎の精霊流しでは爆竹などの大きな音が響き、徳島では多くの人が阿波おどりに参加します。
沖縄ではエイサーの太鼓が響く地域もあります。
一方、京都の五山送り火では、夜の山に浮かぶ炎を見つめながら精霊を送ります。
方法はまったく違います。
それでも、「大切な人を送り出す」という意味ではつながっています。
悲しみを静かに表現する文化。
音や踊りとともに送り出す文化。
そのどちらにも、亡くなった人への思いが込められているのです。
地域によって違うのは行事だけではない
地域差があるのは、有名な祭りや送り火だけではありません。
家庭で行う何気ないお盆の習慣にも、実は多くの違いがあります。
自分では「全国どこでもやっている」と思っていたことが、別の地域ではまったく行われていないこともあります。
ここからは、家庭のお盆に見られる地域差について見ていきましょう。
お供え物にも地域差がある
お盆のお供えといえば、
- 果物
- 和菓子
- そうめん
- 団子
- 故人が好きだった食べ物
などを思い浮かべる人も多いでしょう。
しかし、何を供えるかについて全国共通の決まりがあるわけではありません。
地域の食文化や家庭の習慣、宗派などによって違いがあります。
地元で採れた野菜や果物を供える家庭もあれば、故人が生前好きだった料理を用意する家庭もあります。
お盆のお供え物には、「ご先祖様に食べてもらいたい」という思いだけでなく、その土地の暮らしや食文化も反映されているのです。
精霊馬を作らない地域もある
お盆の代表的なものとして知られているのが「精霊馬(しょうりょううま)」です。
きゅうりとなすに割り箸などを刺し、馬や牛に見立てます。
一般的には、
きゅうりの馬=早く帰ってきてもらう
なすの牛=ゆっくり帰ってもらう
という意味があると説明されています。
テレビやインターネットでもよく紹介されるため、「お盆なら必ず作るもの」と思っている人もいるかもしれません。
しかし、精霊馬を飾る習慣が一般的ではない地域や家庭もあります。
また、作り方や飾り方についても地域差があります。
自分の家で子どもの頃から当たり前に作っていたものが、友人の家庭にはなかった――。
そんな違いが見つかるのも、お盆文化の面白いところです。
迎え火・送り火の方法もさまざま
迎え火はご先祖様を迎えるため、送り火はご先祖様を送り出すために焚くものとして知られています。
家庭では、玄関先などで火を焚く伝統的な方法があります。
一方、住宅事情や防火上の理由から、現在では実際の火を使用しない家庭も増えています。
盆提灯を灯したり、別の方法でご先祖様を迎えたりする場合もあります。
さらに規模を大きくすると、京都の五山送り火のように地域全体の行事として受け継がれているケースもあります。
「火や灯りによって精霊を導く」という考え方は似ていても、その表現方法は地域や時代によって変化しているのです。
お墓参りにも地域や家庭ごとの違いがある
「お盆=お墓参り」というイメージは全国的に広く知られています。
しかし、お墓へ行く日や時間帯、お供えするものなど、細かな部分には違いがあります。
お盆の初日に墓参りをする家庭もあれば、期間中の都合の良い日に行く家庭もあります。
親族がそろって墓参りをする家庭もあれば、それぞれが別々に訪れることもあるでしょう。
また、墓地や寺院によっては、お供え物の持ち帰りや火の使用などについて独自のルールを設けている場合があります。
地域の風習を尊重するとともに、墓地や寺院の決まりを確認することも大切です。
盆踊りも地域によってまったく違う
盆踊りは、日本全国で見られる夏の風景の一つです。
しかし、音楽も踊り方も衣装も地域によって大きく異なります。
大きな輪を作って誰でも参加できる盆踊りもあれば、長い歴史を持つ伝統芸能として受け継がれているものもあります。
秋田の西馬音内盆踊りや徳島の阿波おどりなど、全国的に知られるようになったものもあります。
現在では「夏祭り」として楽しむ意味合いが強いものも少なくありません。
それでも、人々が故郷へ帰るお盆の時期に世代を超えて集まり、同じ音楽に合わせて踊るという光景には、地域のつながりが色濃く残っています。
「うちのお盆」が全国共通とは限らない
お盆の風習は、多くの場合、親から子へ自然に受け継がれます。
そのため、自分の家庭で行っている方法を「普通のお盆」だと思っていることも珍しくありません。
ところが、結婚したり、引っ越したり、別の地域の人と話したりすると、
「えっ、それって全国でやるものじゃなかったの?」
と初めて気づくことがあります。
それは決して、どちらかが間違っているということではありません。
むしろ、その違いこそが、それぞれの土地や家庭が積み重ねてきた歴史です。
何気なく受け継いできた風習について祖父母や両親に聞いてみると、思いがけない家族のルーツが見えてくることもあるでしょう。
お盆は、ご先祖様を供養するだけでなく、自分がどこから来たのかを知る機会にもなるのです。
自分の地域のお盆の風習が分からない場合は?
ここまで見てきたように、日本のお盆にはさまざまな地域差があります。
さらに同じ都道府県でも、市町村や集落、宗派、家庭によって風習が異なる場合があります。
そのため、インターネットでお盆について調べていると、
「自分の家でやっていた方法と違う」
「どちらが正しいの?」
と迷うこともあるでしょう。
そんなときは、全国共通の「正解」を探すより、自分の地域や家庭で受け継がれてきた方法を確認することが大切です。
まずは家族や親族に聞いてみる
最初に確認したいのは、両親や祖父母などの家族・親族です。
「お盆には何を供えていた?」
「迎え火はしていた?」
「昔はどんな盆踊りがあった?」
など、聞いてみるとよいでしょう。
何十年も続けてきたことなので、本人たちは「風習」と意識せず行っている場合もあります。
話を聞いてみると、
「昔はこの場所で火を焚いていた」
「おばあちゃんの家では必ずこの料理を作っていた」
といった、インターネットには載っていない家族独自の話が出てくるかもしれません。
それは、家族の歴史を次の世代へ残すことにもつながります。
菩提寺や地域のお寺へ確認する
仏事としてのお盆の作法について分からない場合は、菩提寺へ確認するのが確実です。
宗派や寺院によって、お盆の供養方法や考え方が異なる場合があります。
例えば、
- 仏壇の飾り方
- お供え物
- 盆提灯
- 初盆・新盆の供養
- お経や法要
などについて迷った場合は、普段お世話になっている寺院へ相談するとよいでしょう。
インターネットで見つけた一般的な方法より、自分の家の宗派や菩提寺の方法を優先した方がよい場合もあります。
自治体や郷土資料館の情報を調べる
「自分の町では昔、どんなお盆をしていたのだろう?」
という文化的な部分を知りたい場合は、自治体や郷土資料館、地域の図書館なども役立ちます。
地域によっては、昔の盆踊りや送り火、供養行事について郷土資料に記録されています。
今では行われなくなった風習が見つかることもあります。
普段何気なく参加している地域のお祭りが、実は数百年前の供養行事とつながっていた――。
そんな発見があるかもしれません。
インターネットの情報だけで「間違い」と決めつけない
インターネットでは、
「お盆の正しいやり方」
「正しいお供え物」
などの情報が数多く紹介されています。
もちろん、基本的な作法を知るうえでは参考になります。
しかし、日本のお盆には大きな地域差があります。
ネットの記事と自分の家庭の方法が違っていたからといって、すぐに「うちのやり方は間違っていた」と考える必要はありません。
長く受け継がれてきた地域や家庭独自の風習である可能性があります。
迷った場合は、家族や菩提寺へ確認してみましょう。
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お盆の地域差に関するよくある質問
Q1. お盆は7月と8月のどちらが正しいですか?
どちらかだけが正しいわけではありません。
現在は8月13日から16日頃にお盆を行う地域が広く見られますが、東京などの一部では7月に行う地域・家庭もあります。
また、沖縄や奄美などでは旧暦を基準にする地域があります。
地域や家庭で受け継がれてきた時期を大切にするとよいでしょう。
Q2. 東京のお盆はなぜ7月なのですか?
背景の一つとして、明治時代の改暦があります。
旧暦から新暦へ移行した後、新暦7月にお盆を行う地域と、時期を約1か月遅らせて8月に行う地域などに分かれていきました。
東京では新暦7月に行う風習が残る地域があります。
ただし、東京都内のすべての家庭が7月盆というわけではありません。
8月にお盆を行う家庭もあります。
Q3. 沖縄の旧盆はなぜ毎年日付が変わるのですか?
沖縄の旧盆は、旧暦7月13日から15日を基準に行われるためです。
旧暦の日付を現在使用しているカレンダーに当てはめると毎年ずれるため、旧盆の日程も年によって変わります。
旧盆は、
1日目の「ウンケー」でご先祖様を迎え、
2日目の「ナカヌヒー」を一緒に過ごし、
3日目の「ウークイ」で送り出す、
という流れが一般的に知られています。
Q4. 精霊馬を作らない地域もありますか?
あります。
きゅうりとなすで作る精霊馬は有名なお盆飾りですが、全国すべての家庭で作るわけではありません。
地域や宗派、家庭によっては精霊馬を飾らないこともあります。
また、飾り方や意味の伝え方についても地域差があります。
Q5. 迎え火や送り火をしなくても大丈夫ですか?
迎え火・送り火を行わない地域や家庭もあります。
また、マンションや住宅密集地などでは防火上の理由から、屋外で火を焚くことが難しい場合もあります。
そのような場合には、盆提灯を用いるなど、家庭に合った方法でご先祖様を迎えることもできます。
火を使う場合は、地域や住宅のルールを確認し、安全を最優先にしましょう。
Q6. お盆の風習は宗派によっても違いますか?
はい。
お盆に対する考え方や仏壇の飾り方、法要などは、仏教の宗派や寺院によって異なることがあります。
特に初盆・新盆などで正式な供養を行う場合は、インターネットの一般的な情報だけで判断せず、菩提寺へ確認することをおすすめします。
Q7. 結婚相手の実家と自分の実家でお盆の方法が違います。どちらに合わせればいいですか?
どちらかが間違っているとは限りません。
出身地域や宗派、家庭の歴史が違えば、お盆の方法が異なるのは自然なことです。
それぞれの家庭の風習を尊重し、必要であれば家族や菩提寺と相談しながら決めるとよいでしょう。
「なぜその方法をするのか」をお互いに知ることが、地域文化や家族の歴史を理解するきっかけにもなります。
まとめ|地域によって違うからこそ日本のお盆は面白い
日本のお盆には、全国共通の一つの形があるわけではありません。
7月にご先祖様を迎える地域。
8月に迎える地域。
旧暦に合わせて毎年違う日に迎える地域。
京都では山に送り火がともされ、長崎では精霊船が街を進み、沖縄ではウチカビやエイサーなど独自の文化が受け継がれています。
家庭に目を向けても、お供え物や精霊馬、迎え火・送り火、お墓参りの方法などにさまざまな違いがあります。
しかし、これほど方法が違っていても、その根底には共通するものがあります。
それは、
「ご先祖様を迎え、感謝し、再び送り出す」
という思いです。
どの地域の方法が一番正しい、というものではありません。
それぞれの土地で暮らしてきた人々が、その土地の歴史や信仰、生活に合わせながら受け継いできたものが、現在のお盆文化です。
そして、その違いを知ることは、自分自身のルーツを知ることにもつながります。
もし今年のお盆に家族や親族と集まる機会があれば、
「昔のお盆って、どんなことをしていた?」
と聞いてみてはいかがでしょうか。
何気なく続けていた習慣に、思いがけない意味が隠されているかもしれません。
そして、それを次の世代へ伝えることもまた、ご先祖様から受け継いできた文化を未来へ残す一つの方法なのではないでしょうか。
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